匿名ラジオ上がり

二次創作というものがある. インターネット愚民の皆様はよくご存じであろう.
ある原作の設定の大部分または一部を流用し, 原作では実現しなかったシチュエーションを実現するという文化, 手法または作品そのものを指す日本語である.

 

二次創作というのは, 原作ありきで存在する. つまり, 消費者は原作の存在, 設定などをある程度把握した上で二次創作を楽しむ. 二次創作が先に来ることはほぼない. 特に, ドラえもんドラゴンボールを始めとする国民的な大作に関して, 原作を知らずに二次創作から入っていく数奇な運命を持った人間はいなかろう. これが私の意見である.

 

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2020年2月, 海外へのインターンシップの最中であった私は, 現地でできた友人とLINEをしていた. 彼は謎に日本語を喋ることができるため, 私は彼に甘えて日本語でやりとりをしていた. 彼は以前, 私に「さくら通信」という最強の日本語のポッドキャストを教えてくれていた. そこで, 私は最強の日本語ポッドキャストである「匿名ラジオ」のうちの, #34「この世で一番かっこいいアルファベットを決めよう!」をリコメンドした. どうやら彼はポッドキャストに困窮していたようであり, その上に「匿名ラジオ #34」もしっかり刺さったようであったため, 「助かった...今みっちゃ探してた、新しい聞くもの (原文ママ)」, 「全部聞きます (原文パパ)」と答えた. 正直, 毒にも薬にもならないクソコンテンツで申し訳ないとも思ったが, 私はなんとなく嬉しかった.

 

私は「匿名ラジオ」のヘビーリスナーで, もちろん現行のものは全部試聴済みであるが, この折にYoutubeの匿名ラジオチャンネルを再度訪れた.
そこにはいくつか再生リストがあり, 【初めての方にオススメ10選!】なる再生リストが目立つ場所に陳列されていた. 彼はきっとこのリストから匿名ラジオに入るのだろうと私は勘ぐった. そのリストのトップを当時飾っていたのは, #75「ちびまる子ちゃんのクラスメートとサバイバルした時の必勝法とは?」であった. 内容は, 題目通りの意味不明な妄言である.

 

ここで当然の疑問が浮上した. 北欧生まれ北欧育ちの彼は「ちびまる子ちゃん」を知っているのであろうか?

 

多分知らない. 絶対知らない. 普通に日本のコンテンツをインターネットでディグっても, 流石にGoogleは「ちびまる子ちゃん」をサジェストしないだろう. 「ちびまる子ちゃん」はそういうのじゃないからだ.

 

仮説の仮説を突き詰めると, 彼の「ちびまる子ちゃん」の体験は, 超絶末端二次創作の「匿名ラジオ#75」から始まることもあり得る. ほぼほぼの確率でそうなる. するとどうなるか.

 

屈折した幻想は虹の彼方にある. 私はそれを知る由もないし, 「責任はとりません」と明言した.