タンポポの官能

花は鮮やかで美しい.
私の最も好きな花は桜だが, 今回に関してはタンポポについて語ろうと思う.


タンポポは春にさく花で, 黄色い. サイズ感もちょうどいい.
白が足りないと思えば, モンシロチョウが来ればいい.
そしていつの間にか半透明でやわらかい綿毛を身に纏い, 宙に溶けて消える.
娘みたいだなって思う. 娘いないけど.


私がタンポポの中で特に魅力を感じるのは, 地中の根の部分である.
ご存知タンポポは双子葉類なので, 根は主根と側根から構成される.
双子葉類は, そのような根の特徴から, 非常に地面から抜き取りやすいことで有名である.


私は, 小中学生の頃に何の気なしにタンポポを抜き取った記憶がある.
タンポポはするりと地面から抜け落ち, 乾いた土を生々しく纏った主根と側根をあらわにした.
主根と側根は今までに見たことがあるが, その時の私は, それまでとは違う何かをタンポポに感じた.


今になって思えば, あれはエロであったのかもしれないと思う.
タンポポは美しい. その外見的な華やかさと根は切り離されて捉えられるように思えるが, 素朴で雄大な根の存在感は, 地上の花弁の華やかさを踏み台にしてより輝くと思う.
私はタンポポを抜き取る時に罪悪感を覚えたようにも記憶している.
タンポポの根は世界一美しいが, 花弁も美しいのは間違いない.
根を観測するためには, タンポポを抜き取り殺すことになる.


タンポポロジック

  花弁 審美
抜く 死ぬ 観測可 完成
抜かない 生きる 観測不可 未完成


反出生主義の論理みたいになっちゃった. (私は現在アンチナタリストではないです)
私は, タンポポの根のエロティシズムは, 美が死ぬからこそ輝くように錯覚する.


P.S. 偉い人曰く, なんかちょっと違うらしいです. 間違い探しをしてみてね.